渓流釣、山菜やキノコなどの楽しみ方
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「ある放流岩魚の一生」
2005年07月31日 (日) | 編集 |

 ある日人口孵化された岩魚の子が人の手で川に放されました。
初めて
経験する強く激しい流れ。
大きな岩魚に追われて身を隠す場所さえままなりません。
お腹が減っても餌はないし仲間たちは次々と人間のハリに掛かって秋が近づいた頃には、みんな居なくなってしまいました。たった1匹彼だけが真冬の氷の下でうずくまっていました。 


 やがて水がぬるみ、またたくさんの岩魚の子が放流され、
桜が咲き、羽虫が飛び交い、彼は口に入る物なら何でも食べました。
上手いとか不味いとか満腹とかじゃなく、
貪欲に狂ったように食べ続けただけです。それが生きる事でした。
そうやって繰り返す季節と目覚めの度に彼はどんどんたくましくなりました。
 
 年月と共にいつしか彼は渓の王者と呼ばれるようになっていました。
何度も恋をして子供もたくさん生まれました。
それでも彼には今日生きる事だけが全てで未来も昔もなかった。
この川に来て一体何年が過ぎたのでしょうか。
それは僅かな油断でした。壮絶な闘いの末、岩魚は遂に力尽きて釣り人の手に捕まりました。
渓で最も美しく大きな岩魚がとうとう人間に負けたのです。
釣り人が岩魚を川に戻した瞬間、彼は自分が人間の手で川に放たれた日を思い出しました。
「もう一度この川で生まれ変わりたい!」
 すでに彼は老いていました。流れに逆らって泳ぐだけの体力も気力もありません。
それは生きて、生きて、生き抜いた1匹の放流岩魚が水に帰った瞬間でした。
 
 彼の生涯は終わりましたが養殖場で生まれた岩魚たちは今年も放流されるのです。
天然の岩魚はもとより、その川の虫を食べ、
その川を住まいとして生き抜いてきた岩魚を、私は愛おしくてたまらない。

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